HIKAKINさんとインターネットについて、僕がどうしても言いたいこと。




約20年前、僕は初めてインターネットというものに触れた。
当時インターネットは普及していなかったが、
何故だか父親がパソコンとモデム(だったかな)を買ってきたのだった。
メインは仕事で使う用途だったと思うけど、
子どもの僕にも触らせてくれた。

端的に言って感動した。
テレビやラジオや雑誌と違って、「ぼく」に反応するのだ。
画面の向こう側にいる誰かが。
今でも忘れない、最初の反応はゲームの話だった。

テイルズオブシリーズというRPGに関して、
僕はゲーム系の掲示板に質問をした。
内容は忘れてしまったが、ちょっとしたアイテムの取り方だった。
一日ほど経って見てみると、返信がついていた。
親切な人が質問に答えてくれたのだ。

僕はアイテムの取り方を知ったことより、
見知らぬ「誰か」が「ぼく」のために返答してくれたという事実にえらく感動した。

全力でお礼を書き込んだ。
今思うと随分大袈裟に感謝した気がする。

僕はファイナルファンタジーやテイルズオブといったRPGやカードゲームのサイトやをよく見るようになった。
次に、ジャグリングのサイト。
今は故人になってしまった方が運営されていたサイトには、当時3コマしかないgifがあり、そのほぼ静止画の動画から
「きっとこの道具はこんな動きをするんだろう」
と想像していた。

インターネット、すげえな。
インターネット、めちゃめちゃ楽しいな。
でもこれ、何か趣味だったり、明確にやることがある人向けだな。
無趣味な人がインターネットを持っても、
特に意味はなさそうだな。

…そう当時の僕は感じたのだった。

これは当時の素朴な感想であって、実際意味がないなんてことはない。
天気も株価もお買い得情報も調べられる。
ただ、趣味嗜好がはっきりしている人には、より有意義になるとは今も思っている。

漠然とYahoo!ニュースの記事やまとめサイトを眺めるよりは、
推しているバルセロナのサッカーチームの試合結果を早く知りたい人の方が有意義に活用できるだろう。

さて、この前HIKAKINさんの動画を観ていた時のこと。
動画の内容は、
HIKAKINさんが匿名電話アプリを使って日本全国のどこかのだれかと通話して
「僕は実はYouTuberのヒカキンなんです。
信じてもらえますか?」
と聞いて信じてもらえるか検証する、という企画だ。

何人も通話していく中で、こんな少年がいた。
(実際に少年かはわからないが、そう呼称する)

「YouTubeは見ますけど…野球ばかり見ますね。あ、あと釣りとか」

HIKAKINさんは、その少年に信じてもらうのは難しいと判断し、少し挨拶して通知を終了。

そしてこうつぶやいた。

「ちょっと偏った方でしたね」

僕はなんとも言えない感覚を覚えた。

違和感、驚き、疑問、思案…
それらが混ざったような、少し自分が居心地が悪くなったような気さえした。

インターネットは、偏った人のためのツールではなかったのか?
インターネットは、具体的な趣味や嗜好を持つ人間のためのツールではなかったのか?
…いや、逆転したんだ。
20年もあればそりゃ変わる。
今では偏っている方が少数派なのだ。
ネットが完全に普及しきった今、
特定のもののためにネットを使う方が稀有なのだ。

だけれど。
僕は少年に声を大にして伝えたくなった。

君は間違ってないよ。
それが本来の使い方だよ。
きっと、野球がすごくすごく好きで、
釣りもすごく好きなんだよね。
それをネットで見ているんだよね。
それでいいんだよ。
クラスメイトはみんなHIKAKINさんやはじめしゃちょーさんを見ているかもしれない。
でもそうじゃなくてもいいんだ。
偏っていていいんだよ。

自分は子どもの頃、友達がみんな知ってるテレビタレントをあまり知らず、みんなが口ずさむ歌をあまり知らなかった。
でもその代わりに、アンディーヘッドやダブルトラブルが好きで、ユーロビートが好きだった。
その偏りは間違いなく自分の一部だ。

…一応念のため、僕はHIKAKINさんの発言を否定したいわけではない。

自分が仮にHIKAKINさんの立場だとして、あの状況では
「偏ってる方でしたね」
しか出てこない。
そうとしか言えない。
偏っていることを良くないようには言ってないし、揶揄しているわけではない。
少し残念そうな反応はしているけれど、
それは企画としてチャレンジ失敗してしまったから当たり前だ。

HIKAKINさんの発言は何も悪くない。
それでも、僕はあの少年を肯定したい気持ちに駆られたんだ。

偏っていていいと伝えたいし、
僕はこれからも偏り続けるだろう。

プロフィール

パフォーマー 謳歌/Ouka

動くだまし絵”と評されたパフォーマー。
最近は「スッキリ」に出演。
YouTube500万、ブログ記事1200RT、出演22ヶ国。
クラウドファンディングで国際エンタメ公演TrueActを主催。

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