こんにちは。Ouka/謳歌です。
一ヶ月ほど前のショーでの出来事が、とてもとても印象的だったので、その話を。
パフォーマーとして出向いた先は海外を回る大型クルーズ!
僕は新しく作った演目を携えて、意気揚々と乗り込みました。
外観ははこんな感じ。
・・・大きさがよくわからないですよね。よーく見ると車が写っているのでちょっとアップにしてみましょう。
おわかりいただけたでしょうか。
こうして見ると規模の大きさがわかるかと思います・・・!
中にはレストラン、バー、プール、バスケコート、ジム、スパ、などなどあるのですが、
クルーズ自体の紹介は別記事に書くとして。
本題はこれです。
過去最低の出来。
さっきのあの客船の中にはこんなステージがあります。
出典 cruiseweb.com
そこで45分のワンマンショーというとってもありがたいお仕事でした。
ショーは水物とはよく言ったもので、成功率100パーセントということはありません。
仮に全て技術が成功しても、それとお客さんが満足してもらえるのかは全く別問題。
今回の出来がどうだったのかというと、正直に言ってひどい出来でした。・・・少なくとも、僕の中では。
その原因の半分が僕自身の失敗、残りは機材トラブルなど。
(もちろん、船の設備のトラブルも全て僕の責任です、僕のショーですからね・・)
・僕の問題
本番の照明で、押さないといけないスイッチの番号が見えなかった。
予定外の光のプログラムが作動してしまった。
・現場の問題
リハーサルでは問題なく使えていた現地のヘッドセットマイクが、本番中に突然動かなくなってしまった。
別のマイクをつけるためスタッフさんが何人もステージに入って、一時ショーの進行はストップ。
などなど、細かいことを列挙したら色々あるんですけど、
とにかく今までのクルーズショーの中で、
最も自己評価は低かったです。
ところが。
最大限の賛辞を受ける。
写真は別会場なのでイメージです
ショーが終わった直後、お客さんの大多数が立ち上がって拍手をしてくれたんです。
スタンディングオベーションというやつ。
今までで自己評価は一番低かったのに、一番反響があったんです。
もう本当に信じられなくって。
ごめんなさいとありがとうが混じった何とも言えない感情と、そして席から立ち上がったお客さんからの拍手に包まれて、
僕はちょっと涙腺が緩んでいました。
どうしてかはお客さんが教えてくれた
理由がたった一つという単純な話ではありません。
・トラブルはどれもメインのパートではなかった
・ショーの後半はかなりいい出来
でも最大の理由は、お客さんから直接教えてもらいました。
I like your honesty.(あなたの素直さが好きだ)
お客さんはそう言ってくれたんです。
この時僕はhonestyって英語を初めて知りましたけど、いい言葉ですね。
素直さ、実直さ、誠実さ、そんな意味です。
実は45分間のうちの最後3分にこんなことを伝えたんです。
「見ての通り、今日のショーはいくつかトラブルがありました。
それでも、これまでいい空気で見てくれて、本当にありがとうございます。
それでは最後の最後、3分間ベストを尽くします」
明らかなトラブルがあったら、変にごまかすよりも、
それをお客さんと共有しちゃったらいい。
(先輩から教えてもらいました、cheeky!さんありがとうございます)
そして最後の3分間、とびきり明るくてノリノリ、スピーディなフィナーレ演目を披露しました。
ここしかもう取り返せるところはない。
だからもう全身全霊、必死で演じました。
じゃないとお客さんにも、仕事として依頼してくれた会社さんにも、あらゆる人にホント申し訳ない。
文字通り、ベストを尽くしました。
↓この演目。この映像の時よりもノリノリだったはず・・!
そして僕は自己評価最低にも関わらず、最高の反響を頂きました。
お客さんとして「トラブルが続いてかわいそう、頑張れ!」という同情や応援の気持ちもあったかもしれません。
でも一つ言えるのは。
もしも明らかなトラブルをごまかし最後まで全力でやりきらなかったら、
こうはなっていなかった。
ごまかさない。
最後まで全力でやる。
言葉にしちゃうと当たり前かもしれませんが、僕は絶望的な状況をひっくり返すことが出来ました。
マジシャンの格言に、You are the magic!という言葉があります。
ざっくり言うとショーとは個々の技や演目ではなく、あなた自身だ、という意味でしょうか。
僕はまだまだ未熟だし、洗練された演目には力が宿るという価値観が強いのですが、
この格言の意味がほんの少しだけ、わかった感覚でした。
ちなみに一番この時のショーでウケたのは、
スタッフさんがステージに入りショーが中断し、そして時間をかけてマイクが交換された直後に僕の言った言葉でした。
「あ、あ、みなさん聞こえますかー?(拍手)
ありがとうございます、ようやくマイクが直りましたね!
でも、今からのシーンでは、マイクは一切使いません(笑)」